この度、第129回日本医学物理学会(JSMP)学術大会の大会長を拝命いたしました筑波大学の磯辺智範と申します。このような大変光栄な機会を与えていただきましたJSMPの諸先生、関係者の方々、切磋琢磨して学術探求を共にしてきた先輩・後輩の方々に大変感謝しております。
第129回日本医学物理学会学術大会は、2025年4月10日(木)~13日(日)の4日間、パシフィコ横浜にて、第84回日本医学放射線学会(JRS)総会、第81回日本放射線技術学会(JSRT)総会学術大会、および日本画像医療システム工業会(JIRA)の国際医用画像総合展(ITEM)との合同で、日本ラジオロジー協会(JRC)主催でJRC2025として開催します。JRC2025のテーマは「Radiology for everyone」です。「人」を幸福にするための放射線医学の未来を創造する、その中には 放射線医学の原点回帰、地域医療への課題 等の理念を込めております。JSMPとしては、Society 5.0 をサブテーマとして取り入れました。Society 5.0は、私たちの暮らしの中に新たなテクノロジー(IoT、AIおよびロボットなど)を取り入れることで住みよい社会を創造するという概念です。JSMPは、新たなテクノロジーの創生により社会(放射線医学)に貢献していきたいという意図を込めております。これらの思いの要素はポスターにも散りばめており、例えば左側の田園風景や右側の2つの山は田舎のシンボルとして 地域医療 を表しており、中心にいる人とロボットは 人とテクノロジーの共存 を表しております。その他にも、情報処理技術の基盤である0/1の信号理論を土台とし、JRC2025の会場であるみなとみらいのシンボル(ランドマークタワー、パシフィコ横浜および観覧車など)を取り入れています。他にも我々の思いはポスターに隠れておりますので、ぜひ探してみてください。
本大会では以下にお示しする3つの柱を基軸に、企画の立案と研究演題を募集したいと考えています。1つ目は「シーズ研究の充実とニーズ研究とのマッチング」です。本邦において、「医学物理学」が芽生えてから約60年が経過しました。医療機器・技術の高度化、IT技術の進歩、そして先人たちの不断の努力によりこの分野は大きな発展を遂げ、社会からの期待は益々高まっています。特に、放射線治療(治療物理学)における医学物理学の社会貢献は目覚ましく、技術・知識の成熟により、質の高い医療を安定して提供している今日があります。しかし、イノベーションの創出 という点では、この分野の成長は鈍化しているように感じているところです。現状の医学物理学を自動車業界のハイブリッド自動車に例えるならば、この分野に携わっている我々は、ガソリンを使用しない純電気自動車化に向け、さらなる一歩を踏み出す力が必要ではないかと考えています。多くの先生に、本学会へのご参加、専門的な研究をご発表いただき、経験豊富な研究者から建設的で発展的な貴重な意見をいただくことで、さらに研究が発展するのみならず、交流によって新たな研究シーズが生まれる場になると考えております。本大会においても、十分な議論が行えるような場を提供することをお約束します。2つ目は「研究の場(思考)の領域拡大」です。医学物理学は、4つの専門領域(治療物理学、診断物理学、核医学、放射線防護学)に大別されますが、学術大会における一般演題や企画は「治療物理学」に特化した内容が圧倒的に多く、いささかバランスを欠いているように感じています。会員の興味や活躍の場が「治療物理学」にあると言えばそれまでですが、他の専門領域を知ることは 技術の融合・新学術領域の創成 に不可欠であると考えています。本大会では、治療物理学以外の分野に積極的に焦点をあてた企画をプログラムに取り入れ、通常の募集方法に加え、テーマを絞った演題を募集するなど、工夫を凝らした運営を行いたいと考えています。3つ目は「医学物理士」です。当会は、学問・研究を臨床現場に届けるという強い意志のもと、医学物理士の国家資格化や臨床現場で活躍できる場を提供するサポートに取り組んできました。医学物理士が臨床現場で幅広く活躍できる環境を構築すべく、「教育(人材養成)、国家資格化、職域拡大」等の企画を視野に入れています。
2023年5月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法上の位置づけで「5類感染症」となり、さまざまな制限が解除され、対面が当たり前だった学術大会の姿を取り戻しつつあります。是非、現地(会場)に足を運んでいただき、本大会を情報収集および交流の場、そして自身の研究の発展性の新たなヒントを模索する場としてご活用いただければ幸いです。先生方のご参加を、心よりお待ちしております。